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2013年07月01日
アクアピット@Cotton Club。金子雄太(org)+小沼ようすけ(g)+大槻“KALTA”英宣(ds)のトリオは、5月に第3弾『オランジュ』をリリースしており、これは某氏が大手レコード会社から独立後に立ち上げたレーベル、T5 Jazz Recordsの第1回発売作品となった。CDの印刷面はLPレコードを模したデザインで、記録面は銀色ではなくブラック・ディスク仕様というこだわりの作りだ。ステージは新作からの「キット・カット」や、旧作からのレパートリーで構成。ハモンドB3と会場の親和性を実証した金子、相変わらずのギター・オタクぶりを印象付けた小沼、多彩なテクニックと理論家の一面を見せた大槻と、三者三様ながら一体となったサウンドで楽しませてくれた。結成から16年、新作のリリースを機に、それぞれの個人仕事が多忙ながら、このユニットの活動にも拍車がかかると聴いた。
2013年07月02日
パット・マルティーノ・トリオ@ブルーノート東京。前回、2011年10月末の丸の内Cotton Club公演もトリオで、今回はその時と同じパット・ビアンキ(org)と、新顔のカーメン・イントーレ(ds)を従えた編成だ。ここで詳述しないが、マルティーノが他の著名ギタリストと異なる点は、重病を克服してなおストイックにギター道を追求していること。その姿は神々しくさえ映り、日本でも数多くの信者から支持されている。4月リリースの新作『ウィー・アー・トゥゲザー・アゲイン』はギル・ゴールドスタインとのリユニオン・プロジェクトで、それがライヴでも実現すれば良かったのだが、今夜はレギュラー・ユニットでのマルティーノを堪能できた。5曲目まで、曲紹介を含むMCが一切なく、黙々と演奏を続ける。ウェイン・ショーター作曲の「フットプリンツ」を、原曲とはリズムを変えてアレンジ。ブラジル曲「ジ・アイランド」の選曲は、現代に生きる音楽家としてのマルティーノのセンスと聴いた。明日からCotton Clubに出演する客席のピー・ウィー・エリスを紹介して、ソニー・ロリンズの「オレオ」を演奏。両手が激しく動くコード・ワークこそが、マルティーノのカリスマ的な魅力の要因だと再認識した。
2013年07月05日
60年代からジェームス・ブラウンのホーン・セクションを務め、ジャズとの接点も強いピー・ウィー・エリス(ts,ss)が、6人編成のバンドでCotton Clubに再出演。オープニングはエリスのオリジナル曲で、ジャコ・パストリアスがレパートリーにしたことでジャズ・ファンにも知られる「ザ・チキン」。これでつかみはOKになると、男性歌手が加わったオーティス・レディングの「ドック・オブ・ザ・ベイ」でソウル色を満喫。さらにグローヴァー・ワシントンJr.のヒット曲「ジャスト・ザ・トゥ・オブ・アス」と進んで、ジャンルを横断する音楽性を印象付けた。ハービー・ハンコックの「カンタロープ・アイランド」は、ジャズ・ファンに嬉しい選曲。観客への歌唱指導をはさみ、アンコールはJBの「アイ・ガット・ユー」で楽しく締めくくった。
2013年07月14日
毎年恒例のノルウェー取材。今回はまずコペンハーゲン経由でオスロに入り、一泊となった。ホテルにチェックインすると、我々海外からのゲストの世話役であるアスラクから、近くのレストランでディナーとのメッセージが。そこは2003年に宿泊した由緒あるホテルに近い場所のチャイニーズ・レストラン、入店するとバンクーバー・ジャズ祭でお世話になったケン・ピッカリングと、昨年のコングスベルクでも一緒だったマケドニアのオリヴァーが先客で、再会を祝した。4人で2時間の情報交換。アスラクのオススメだけあって、日本と比べても遜色のない美味であった。
2013年07月15日
今回が9回目のノルウェー訪問だが、モルデは初めて。午後の便でオスロから移動。《Molde International Jazz Festival》のエリア内にあるクオリティ・ホテルにチェックイン。ここは北欧では有名なチェーン・ホテルで、昨年のコングスベルクの最終日にも系列ホテルに泊っているので安心感がある。今回招待されたのは欧米日からのフェスティヴァル・プロデューサーとジャーナリスト20名で、アジアからはぼくが唯一だった。毎年この時期に会う知人や初対面の関係者に挨拶。このような形で人脈を広げられるが、関係者向けにオーガナイズされた海外のジャズ祭の楽しみでもある。
●Jason Moran ? In My Mind @ Bjornsonhuset
今回のフェスティヴァルでアーティスト・イン・レジデンスを務めるジェイソン・モランのオープニング・コンサート。“イン・マイ・マインド”はセロニアス・モンクに触発されたプロジェクト。
●Trondheim Jazzorchestra + Albatrosh @ Teatret Vart
ノルウェーの才人やジョシュア・レッドマンをフィーチャーしたアルバムで、近年勢いのあるビッグバンド。アルバトロッシュは同国の若手デュオで、デビュー前の2008年に関係者のみのライヴで観ている。
2013年07月16日
●16:00:Jason Moran & Andratx@Teatret Vart
デンマーク+スェーデン+ノルウェーのトリオに、オスグッドの共演者マリア・ローレット・フリースとモランが加わったクインテット。静かに始まり、起伏のあるインプロヴィゼーション。ここでは元々あった北欧人ユニットの音楽性にモランが寄り添うことによって、化学反応が生じることが期待されたように思われ、結果的には異色のプロジェクトになった。
●20:00:Bill Frisell Big Sur Sextet@Teatret Vart
新作『ビッグ・サー』のレコーディング・メンバー5名にヴァイオリン奏者が加わった、今回のヨーロッパ・ツアーのためのセクステット。同作は短い時間の曲多数の構成だったが、今夜の1曲目は40分にわたる長編で、繰り返しのフレーズが心地よさを生んだ。
●22:00:Phronesis@Storyville
ストーリー性のあるヨーロピアン・タイプのピアノ・トリオ。e.s.t.からの影響が認められる。Ivo Neame(p)はかなりの速弾きでエネルギッシュ。爆音が大受け。
●24:00:Stian Westerhus&Pale Horses@Teatret Vart Natt
今回は新生トリオのお披露目ライヴ。Oystein Moen(Pumaのb)、Erland Dahlen(ニルス・ペッター・モルヴェル3の同僚ds)によるサウンドは、ヘビー・メタルなもの。注目すべきはシュティアン自身がヴォーカルをとっていることで、女性と見紛う高音域歌唱は彼らのサウンドにマッチしていた。
2013年07月17日
●16:00:ESP@Storyville
今春デビュー作を出したばかりの若手4tet。中心人物はモルデ生まれのEspen Bjarnar。Dan Peter Sundland(el-b)は楽器を縦に構えて、チェロの弓で弾くユニークなスタイルを見せた。鍵盤のArne Torvikはピアノとキーボードの両刀で、後者の場合はel-g+el-bと共にロック色も。
●18:00:Charles Lloyd Sangam@Bjornsonhuset
来日公演がまだ実現していないだけに、今回のフェスティヴァルで楽しみにしていたプログラムのひとつ。ザキール・フセイン(tabla)+エリック・ハーランド(p)+ロイド(ds)の編成、ジェイソン・モランとアリシア・ホール・モランの飛び入りも見ものだった。
●20:00:テリエ・リピダル The Sound Of Dreams@Teatret Vart
客席はスタンディング。リピダルのel-bから静かにスタート。これが前奏曲になると、古いポピュラー曲がラジオから流れる、という設定を提示して進行。最後は再びオールディーズが流れて静かに終わった60分の大作だった。
●22:00:Sakata-Nilssen-Love-Berthling@Storyville
ピットインではお馴染みの坂田明&ポール・ニルセン=ラヴがノルウェーに登場。まず坂田の冗舌なアルトサックスが炸裂した1曲目で、おそらく初体験者がほとんどと思われる観客を驚かせた。坂田のヴォイス・パフォーマーのスキルもしっかりとアピール。
●24:00:Bushman’s Revenge@Teatret Vart Natt(客席はスタンディング)
結成10周年になるノルウェーの新世代トリオ。登場するや観客から歓声が上がり、人気の高さがうかがえる。ロックを主体に、ジャズの即興も取り入れたサウンド。セミナーでソロ・パフォーマンスを行ったガード・ニルセン(ds)は、その時よりも大きいハードロック仕様の楽器で轟音を叩き出した。
2013年07月19日
ノルウェー取材から午前中に帰国。夜はさっそく丸の内Cotton Clubへ。ヘイリー・ロレンは日本の大手レコード会社からのリリースによって、着実に人気を高めている。客席が超満員で埋まったのは、同店がヴォーカリストに強いことと関係があると思う。彼女のブレーンであるマット・トレーダー(p)のトリオをバックに、「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」「青い影」「ハッピー・トゥゲザー」「ブルー・スカイ」等を歌い、ウクレレも演奏。アンコールでは日本語&英語の「いとしのエリー」で、ファンの期待に応えた。
2013年07月24日
デヴィッド・マレイは70年代のロフト・ジャズ期から活動し、フリー・ジャズ系ミュージシャンが脚光を浴びた80年代に大舞台へと飛躍した実力者。今回の来日ツアーでは<フジ・ロック>にもブッキングされ、今夜のブルーノート東京公演も実現した。マレイ(ts)とジャリブ・シャヒド(b)のデュオで始まり、メイシー・グレイ(vo)が加わったビリー・ホリデイ所縁の「ソリチュード」と進行。昨年NYでマレイBBとの共演が報じられたジェームス・ブラッド・ウルマー作曲のナンバーを取り上げたのは嬉しかった。
2013年07月25日
チャック・ローブがフォープレイのギタリストを拝命したことを知った時に、若干の違和感を覚えたのはぼくだけではあるまい。初代リー・リトナー?2代目ラリー・カールトンの流れで、ローブに格落ち感が拭えなかったからだ。しかしスタジオ仕事が豊富なローブは、おそらくボブ・ジェームスからの指令を忠実に遂行し、後任としての役割をきちんとこなしたステージを、ぼくはすみだトリフォニーホールで確認している。そんなローブが今回はメトロでCotton Clubに出演。94年に結成した盟友ミッチェル・フォアマンとのユニットに、エリック・マリエンサルが加わった豪華版だ。「Metro Café」「The Journey」「In A Sentimental Mood」等を演奏。ビル・エヴァンス・トリビュート作で注目されたキャリアのあるフォアマンの再浮上にも期待したいと思った。
2013年07月30日
オーストラリア大使館とはジャズ・ミュージシャンの取材や協力を通じて、良い関係を築いている。今夜はBBQ提供のホーム・パーティーに足を運んだ。寛いだ雰囲気の中で、「ジャズジャパン」三森編集長、「Jazz Perspective」山本編集長、<東京JAZZ>八島氏、ピアニスト西山瞳さんらと歓談。このような場から新しいアイデアや企画が生まれるのだろう。
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