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2013年03月01日
「世界の女の子に、生きていく力を」をコンセプトに掲げるチャリティー・ライヴ《Women in Jazz Vol.4》が、東京・日本橋三井ホールで開催された。以下に「ジャズジャパン」4月号に書いたニュース原稿を転載する。
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今回は第1回の出演者でもあるmeg、守屋純子、阿川泰子に、マリーン、牧山純子を加えた女性アーティスト5名をフィーチャー。トップバッターのmegはバックを務める本田雅人 B.B.Stationのホーンズとのユニゾンによる「スペイン」で華やかにスタート。ショパンが原曲の「ブライト・スター」や、「ルパン三世」の英語詞もスムーズな歌唱で魅了した。続くマリーンは本田BBとの共演で2007年に見事な復帰を果たした『ジャズ&アウト』から、ジャジー&ボサ・アレンジの「マジック」を含む5曲を、堂々のステージ・マナーで熱唱。貧しかった自身の子供時代のエピソードが、イベントの趣旨と重なって、観客の共感を誘った。第2部に進むと、守屋と牧山が登場してアダルトな雰囲気に。守屋作曲の「ダンシング・パペット」では、牧山とビッグバンドの初共演が実現し、大舞台でバイオリンを力強く響かせたのが印象的だった。トリを務めた阿川は、巧みなMCと合わせた安定したステージ運びで、スタンダード曲を披露。キャリアを滲ませた「ヘンリー・マンシーニ・メドレー」でハイライトを演出した。フィナーレは出演者全員による「イズント・シー・ラブリー」で、満員の観客も大満足。チャリティの精神とジャズの魅力を両立させる有意義な一夜であった。
2013年03月02日
T&Kエンタテインメント主催のショーケース・ライヴ@Tokyo TUC。女性4名をフィーチャーしたプログラムのトップバッターは男女デュオのMIO & SHO。前回はトリオで出演した二人は、1年前に『ア・シャイニング・スター』をリリース。曲調によって異なる表情を見せたMIOは、英語歌詞がこなれていて、オリジナル曲「ヒーロー」の芯の強い歌唱で存在感をアピール。同作収録曲のオリータ・アダムス「ゲット・ヒア」を取り上げ、ジャズとソウルを兼備するスキルを示した。2組目の山崎ふみこ(vib)は、色々なお祝い事に使える曲名を考えて作曲した「ハッピー・ラッキー・ハッピー」でスタートすると、一番好きな作曲家だというジョージ・ガーシュインの「スーン」や、自作サンバ曲を演奏。MCで楽器の説明をしながら、観客との距離を縮めたのも良かった。デュオ・ユニット“ふたつゆ”の宮崎友紀子は、単独参加でトリオをバックに、スタンダード、ブラジル、邦楽と多彩な選曲で構成。ふたつゆのレパートリー「ふるさとのうた」のバラード歌唱と、デビュー作『はるいろ』からの「さくら、さくら」が印象的だった。4組目のYUKARIは輝かしい経歴を誇るNY在住のフルート奏者で、近年はコンスタントな帰国公演を通じてファンを拡大中だ。郷里を題材にしたリズミカルな「Numazu Bushi」や、「抱擁」を意味する囁くようなプレイの「エンブレイス」で、優れた技巧を披露した。最後のセッション・パートに進むと、山崎を含むクインテットが「フィール・ライク・メイキング・ラヴ」でリラックス・ムードを演出。さらにMIOと宮崎も加わった出演者全員による「ルート66」で、ハッピーに幕を閉じた。
2013年03月06日
今月末に来日公演を控えるウェイン・ショーターについてのトーク・イヴェントを打診されたのは、お付き合いのない秋葉原Le Tabouからだった。オーディオ、LP&CDの販売店は、毎週水曜日にイヴェントを開催しており、何かの縁で声がかかったというわけである。今年、8年ぶり新作として話題を呼ぶ『ウィズアウト・ア・ネット』の全曲試聴が、ふさわしいテーマだと考えて、準備を進めた。ショーターのセルフ・カヴァー曲の初演との聴き比べも盛り込んだプログラムで、コンサートへの良い予習になったと思う。
2013年03月07日
エルダー・ジャンギロフ・トリオ@Cotton Club。1月にライアン・カイザー=アリ・ジャクソン・クァルテットで来日したキルギス共和国出身のピアニストが、自己のトリオで丸の内に再登場。実は万全の体調ではなかった前回公演のリヴェンジの気持ちもあったようだ。最新作『ブレイクスルー』と同様に、オリジナルとスタンダード曲で構成。ベーシストのアーマンド・ゴラはアコースティックとエレクトリックを持ち替え、ドラマーのルドウィッグ・アルフォンソはNYのトレンドを反映したスキルを示した。ライヴでミュージシャンから観客への歌唱指導は少なくないが、今夜は珍しい“リズム指導”。しかし「1-2-3-...」の変拍子は速すぎて、誰もついてこられなかった(苦笑)。これも天才肌のエルダーたる所以かもしれない。アンコールはピアノ独奏の「モーニン」。
2013年03月08日
ラリー・コリエル・スペシャル・セッション@ビルビードライブ東京。以下にミュージック・ペンクラブ・ジャパンのHP掲載レヴューを転載する。
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最年長のラリー・コリエル(g)を中心とした6人編成による、一夜限りの特別セッション。事前に告知されていなかったが、蓋を開けてみれば予想通りのマイルス・デイヴィス・トリビュート・バンドの姿を明らかにした。「イン・ア・サイレント・ウェイ」を前奏曲に、冒頭から雰囲気を醸し出すと、ウォーレス・ルーニー(tp)?リック・マーギッツァ(ts)?ジョーイ・デフランセスコ(org)と、リズムを変化させながらのソロ・リレーでマイルスと所縁のある各人の立場を表明。コリエルが存在感を光らせた「ニュー・ブルース」を経て、ウェイン・ショーター作曲の60年代マイルス・レパートリー「フットプリンツ」ではオマー・ハキム(ds)のソロで、タイムラグを一気に現在へと引き寄せた。ここまで裏方に徹していたダリル・ジョーンズ(b)は、アンコール曲「ジャン・ピエール」のイントロで、観客の期待に対応。今回だけに終わらせてほしくない意義ある企画だった、
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終演後、丸の内Cotton Clubへ移動。グレゴリー・ポーターはすでに欧米で話題沸騰の男性ヴォーカリストだ。独特な形の帽子を被った姿で、初来日のステージを務めた。「ワーク・ソング」「1961」等のレパートリーを、特徴あるバリトン・ヴォイスで満員の観客に届けた。
2013年03月10日
桑原あいトリオ・プロジェクト@TUC。昨年11月にデビュー作『from here to there』を発表するや、たちまち注目を集めたピアニストが、秋葉原の名店に初出演した。同作は1曲を除き、すべてオリジナルだったが、ライヴではカヴァー曲も取り上げていて、その点でも期待を持っていた。果たしてウェザー・リポート時代にジャコ・パストリアスが書いた「ハヴォナ」や、ミシェル・カミロ、レタスのナンバーをリメイク。タイトなトリオ・サウンドが、幅広い年齢層の観客にインパクトを与えた。4月には早くも第2弾が登場する。
2013年03月11日
エリック・アレキサンダー・クァルテット@Cotton Club。この日は東日本大震災からちょうど2年にあたる。冒頭、メンバー全員が横一列になり、エリックが被災者に対する哀悼の意を表明。日本のレコード会社の原盤制作によって、こちらでの人気を得ただけに、悲しい出来事を自分のこととして受け止めているのだろう。最新作『Touching』収録曲でマイケル・ジャクソンの「Gone Too Soon」は、当夜にふさわしい好選曲だった。超満員の盛況。
2013年03月16日
夕方、ディスクユニオン山本氏、オーストラリアRufus Recordsのティム・ダンと再会を祝して、軽く呑む。その後三人で新宿ピットインへ移動し、シャイ・マエストロ・トリオを観た。アヴィシャイ・コーエン(b)・グループで頭角を現し、独立後は自己のトリオを率いて活動中。セルフ・タイトルの初リーダー作が国内盤仕様でリリースされたばかりのタイミングでの、初来日公演となった。同作および10月にリリース予定の新作からも数曲披露。予想に違わぬピアノ・テクニックで圧倒された。満員の盛況で、女性客が多かったのも良かった。
2013年03月18日
西山瞳インタビュー@三番町カフェ。4月10日にトリオ新作『Sympathy』をリリースするピアニストに、制作の舞台裏を聞いた。4月下旬発売号の「ジャズジャパン」に掲載。
その後、中目黒“楽屋”でイン・ザ・カントリーを観る。10周年を迎えたノルウェーのトリオは、2008年にスタバンゲル、2011年にコングスベルクと、現地で2度ライヴを体験している。彼らはこれまで母国のRune Grammofonからアルバムをリリースしていたが、今年ドイツACTへ移籍して、新作『Sunset Sunrise』が出たばかり。モーテン・クヴェニル(p,vo)+ローゲル・アルンツェン(b)+ポール・ハウスケン(ds)が生み出すサウンドは、2年前のコングスベルクよりもヘヴィーに進化していた。ステージ背景には終始、映像が流れ(これはコングスベルクと同様)、音とシンクロしてイメージが広がった。前回はギターとヴィブラフォンのゲスト奏者が加わっていたが、現在は三人に戻したとのことである。
2013年03月22日
1935年生まれのドン・フリードマンは、年齢的には老境に入っているが、奏でるピアノ・サウンドは現在も新鮮に響く。今回はフィル・パロンビ(b)+高橋信之介(ds)との初トリオで、丸の内Cotton Clubに出演。「星影のステラ」でスタートすると、親友の故アッティラ・ゾラーに捧げた「A to Z」で変わらぬ友情を表明。「ネヴァー・レット・ミー・ゴー」は最も好きなスタンダード・ナンバーというだけあって、アイデアが止まらない雄弁なピアノが素晴らしい。「日本では特に人気が高い」と紹介した「サークル・ワルツ」、「オール・ザ・シングス・ユー・アー」に基づいてフリードマンが書いた「オールモスト・エヴリシング」。初参加のパロンビは、スコット・ラファロの遺族から貴重なベースを譲り受けたほどのラファロ・ファンで、フリードマンが起用したのも所以がある。アンコールの「バウンシング・ウィズ・バド」まで、充実の70分だった。
2013年03月24日
渋谷の新しいランドマーク“ヒカリエ”内のホール“東急シアターオーブ”で、《JAZZ WEEK TOKYO 2013》が開催中。今夜は待望のウェイン・ショーターの登場だ。8年ぶりの新作『ウィズアウト・ア・ネット』が話題を集める中での来日公演である。今回はダニーロ・ペレス(p)+ジョン・パティトゥッチ(b)のレギュラー・メンバーに、ドラムスが新鋭のジョナサン・ピンソンというクァルテット。「オービッツ」を含む演奏は、予想できないスリリングな展開の連続で、ペレスが進行役のキー・パーソンを演じた。通常はレギュラー・メンバーのブライアン・ブレイド(ds)とショーターが軸となってバンド・サウンドを作っていくのだが、今夜はショーターとペレスにそれがシフトした形だ。ともあれ、ショーターのソプラノは世界最高、を改めて体感したのだった。
2013年03月26日
リック・ブラウン@CottonClub。ロビーで冷酒とおつまみのサービス。同店が折々に企画するこのもてなしは嬉しい。今夜はチック・コリア・エレクトリック・バンドで名をあげたエリック・マリエンサル(sax)、今年のグラミー賞受賞者グレッグ・カルーキス(key)、実力派バイプレイヤーのネイト・フィリップス(el-b)、クリフォード・ブラウンを叔父に持つレイフォード・グリフィン(ds)の5人からなるオールスターズだ。まずブラウンがトランペットを吹きながら客席の間を歩いてステージへ。同様にマリエンサルを呼び込んでスタートした。カーク・ウェイラム+ノーマン・ブラウンとのプロジェクト新作の発売を控えていることもあって、今夜のブラウンはノリがいい。ヴォーカルを披露した「ザ・グッド・ライフ」やハーブ・アルパートに捧げたナンバー等で、エンタメ精神たっぷりのステージを満喫した。
2013年03月27日
22日に始まった《JAZZ WEEK TOKYO 2013》、その最終日はエグベルト&アレキサンドル・ジスモンチ@シアターオーブ。父子のギター・デュオは2009年の『サウダソォンエス』に収録されているが、ライヴは本邦初公開だ。エグベルトがいつものペースで演奏し、アレキサンドルが生真面目に父親をサポートする関係が浮き彫りになる。これぞ父子愛溢れるステージ。ジスモンチのソロ・ピアノの世界にも、毎度のことながら酔いしれた。
2013年03月29日
西山瞳トリオ@Tokyo TUC。4月10日発売の新作『Sympathy』のメンバーである佐藤“ハチ”恭彦(b)+池長一美(ds)と共に、同店に初出演した。同作収録曲を先行演奏してくれたのが、ファンには嬉しい。独自の世界を追求してきた西山と、腕利きの二人が織り成すサウンドは、日本のどこを探しても他に見つからないピアノ・トリオだと確信した。
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