Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
ボストン在住のヴェテラン・ピアニスト
2009年10月14日
バート・シーガーのアルバムを聴いて親しんでいるファンは、かなりのジャズ・ピアノ・マニアだと言っていいかもしれない。来日公演が10度以上を数えるということでは知名度が広がっているはずだが、今だに知る人ぞ知る域のピアニスト。今夜は渋谷「JZ Brat」で日本人ミュージシャン2人とのトリオを観た。ファースト・セットは「ユー・ステップト・アウト・オブ・ア・ドリーム」「ハウ・アバウト・ユー」等のスタンダード・ナンバーを織り交ぜたプログラムで、観客との親近感を図った。シーガーの演奏には確かにビル・エヴァンス譲りのフレーズが認められたが、全体としてはエヴァンス派とまでは言えない複合的な影響関係があり、そのあたりにシーガーの独自性がうかがえる。セカンド・セットでは自作曲を主体としたプログラムで、オリジナリティをアピール。レコーディングでも共演歴を重ねている池長一美(ds)が、複雑なリズム構成の楽曲にも対応して、シーガーの世界を観客に伝える原動力を演じた。来日前にメールでやり取りをしたシーガーと、終演後に談笑。真面目な人柄に触れたのだった。