Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー

セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。

3年ぶりのソロ・コンサート

2008年05月17日

 2005年10月以来3年ぶりとなるキース・ジャレットのソロ・コンサートを、東京・渋谷“オーチャードホール”で観る。この間キースは同年9月のNY録音作『カーネギー・ホール・コンサート』で新たな感動を全世界に発信しており、今宵会場に集ったファンの多くは同作をインプットした上で開演を心待ちにしたと思われる。慢性疲労症候群という難病が落ち着いた復帰後のステージは、即興のショート・ピースを主体としたプログラムであり、今夜もそのスタイルが踏襲されると予想していた。
 会場に入ると、注意書きが目に飛び込んできた。前回のソロ公演で俎上に上ったノイズ問題である。携帯の電源を切り、傘を床に置き、ハンカチを用意すれば準備完了。ファースト・セットはわかりやすいメロディの繰り返しから始まり、やがてアブストラクトな場面へ移行。その後、祈りを思わせるパートに進んで静かな演奏へ。と、そこで観客の咳が気になったのか、演奏を終わらせた。キースが「どうぞ咳をしてください」のジェスチャーをしたことで、曲が終わったことを知った観客が拍手。キースは「咳をする時は口をふさいでほしい」と意思表示。曲の流れとしては、ここで止めなくてもいいのに、と思った場面だったので、キースの集中力が途切れたのがその理由なのだと解釈した。ここまでが30分の連続演奏。もしアクシデントがなければ、初期の流儀と同じように40?45分の即興となったのではないか。気を取り直して臨んだ2曲目は、アップテンポでのアブストラクトな演奏に集中。約15分間でエネルギーを一気に吐き出した。
 セカンド・セットの1曲目は短い即興。続く25分間の演奏では、過去に例のない場面を目撃した。演奏中にキースがピアノ蓋を閉じたり開いたりを繰り返して、観客の笑いを誘ったのである。この動きはファースト・セットの咳問題に起因していると思ったのだが、どうだろう。こうしてセカンドはフィニッシュ。午後8:40のここまで正味1時間13分は、過去の来日公演に比べてかなり短い。アンコールは1曲目がスロー、2曲目がファンキー・チューン。ここで終演かと思ったが、キースは再び拍手に応えた。美旋律バラードの3曲目、ブルースの4曲目ときて、5回目のアンコールでは再び美旋律バラードを披露。その間、一旦退場してお辞儀をしただけでまた退場というシーンも繰り返されたのだが、このような客席とのやり取りはすっかり定番となった。終わってみれば40分超のアンコール・パートは、セカンド・セットよりも長時間。今夜思ったのは、キースのソロ・コンサートにおいて、今やアンコールは単なるアンコールではなく、本編と同等、あるいはそれ以上の重みがあるということだ。そこに長編インプロヴィゼーションとのコントラストをキースが企図していたのであれば、ファースト・セットの想定外の事態はかえすがえすも残念。アンコールで客席を指差し、「ライトが見えた。カメラを回しているのなら止めてほしい」と言いながらも、アンコールに応えてくれたのが嬉しい。お茶目な素顔を見せたキースは、やっぱり世界で日本のファンを最も愛しているのだと思う。

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