Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
チェーホフを通じて生まれた実験劇
2007年08月29日
こまつ座&シス・カンパニー公演「ロマンス」を世田谷パブリックシアターで観た。「かもめ」「三人姉妹」「桜の園」で知られるロシアの作家で、医師としても人々に施したチェーホフの生涯をベースに、井上ひさしが書いたオリジナル脚本の初演である。休憩をはさんだ3時間近い舞台は、出演者がわずか6人。各人が複数の役柄を演じるためでもあるのだが、このキャスティングは観客の目をステージに集中させる効果を生んでいた。改めて言うまでもなく、ぼくが足を運んだ理由は、マリヤ・チェーホワ他役を演じた松たか子が目当て。会場内に足を踏み入れて思ったのは、前回ここで観た時とは客席のセッティングが違っていたこと。前回は最前列がそのままステージと地続きで、ステージをはさんだ両側に客席が用意されていたのだが、今回は通常のホール・ステージと同じ形だ。いわゆる洋ものでも実力を発揮するたかちゃんは、過去のミュージカル作で実績を積んでいるオリジナル楽曲での歌唱力も披露し、安定した実力を印象づけた。むしろ本作よりもずっと過酷な芝居も経験していることを踏まえれば、今作は彼女にとって余裕すらあったのかもしれない。他の出演者で特筆したいのが生瀬勝久。TV番組を通じて怪演ぶりは知っていたが、生の生瀬は面白過ぎた。大竹しのぶも含み、適材適所のキャスティングも成功の要因だと思った。