Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー

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2007年07月アーカイブ

2007年07月02日

フランスの要注目レーベルのスタッフが来日

 フランスのレーベルNocturneは近年ピエール・ド・ベスマン、ムタン兄弟等々、注目すべき新作を多数リリースしている。同国がヨーロッパ・ジャズの中心的存在であり続けた事実を踏まえれば、 Nocturneがいかに重要なレーベルかが明らかだろう。今日は同レーベルの国際セールス・マネジャーを務めるElvin Pagiras氏と、日本でのディストリビューターであるキング・インターナショナルの関口さんの3人で、渋谷で打ち合わせをした。その席で明らかになったのは、フランスの代表的ジャズ・ミュージシャンの地位を獲得しているベルモンド・ブラザーズとエリザベス・コントマヌー(vo)が、日本ではアンダーレイテッドに甘んじている問題。

 実力があるのにそれに見合った評価を得ていないことを改善するための知恵を出す、ということが課題となった。ちなみに母国で昨年高い評価を受けたエリザベス盤は、日本盤としてもリリースされたが、あまり注目されなかった。ミーティングの後、HMVのジャズ・フロアーへ移動し、新譜をチェック。今回が数度目の来日となるエルヴィン氏は、ジャズ・ファンである父親から名ドラマーの名前をつけられたという、生まれながらのジャズ・エキスパートである。

2007年07月06日

ドイツの人気ピアニストが日本ツアーの最終公演に登場

 2005年リリース作『ザ・サウンド・オブ・レインボー』でECMレコードへの並々ならぬシンパシーを表明したドイツ人ピアニストのウォルター・ラングが、恒例のジャパン・ツアーを行った。今夜は新作『ロマンチック街道の彼方』のリリース直後という、タイミングのいいライヴである。メンバーは長年安定しているニコラス・タイズ(b)、リック・ホランダー (ds)とのトリオだ。ラングは80年代にホランダーのグループに起用されたことがきっかけとなって、ジャズ界に進出した経緯がある。今夜のステージは新旧のレパートリーを取り混ぜたプログラムとなった。

 ファースト・セットでは驚きの場面が散見できた。
「ぼくが曲名を言わなくてもわかると思う」と言って始めた「リンゴ追分」はモーダルでスピリチュアルなアレンジが新鮮。ビートルズ『アビー・ロード』収録曲「ビコーズ」は、大胆なアップ・テンポで、昨年発売の別プロジェクト“エルフ”を連想させる演奏を披露した。つまり2つの異なるトリオ・プロジェクトの境界線があいまいになったのが、当夜の最大の収穫であり、ラングがミュージシャンとして成長している姿が確認できたのもファンには嬉しいこととなった。終演後に話しをしたところ、帰国後にELFトリオの新作のレコーディングを行うとのこと。楽しみである。

2007年07月18日

カナダからまたしても新星が登場

 マイケル・ブーブレ、ソフィー・ミルマンなど実力派の若手ヴォーカリストを輩出しているカナダから、また1人才人が生まれた。シンガー&ピアニストのエリザベス・シェパードである。先頃日本でもデビュー作『スタート・トゥ・ムーヴ』がリリースされたことを受けて初来日。今夜は4日連続公演の初日、ファースト・ステージを丸の内「Cotton Club」で観た。同作は著名ジャズメンの名前が次々と飛び出すオリジナル曲や、自作詞をつけたクリフォード・ブラウン曲など、ジャズの伝統に対するシンパシーを表明しつつ、現代的なセンスで自分流の味付けをしているのが印象的だった。バンドはベース+ドラムスとのシンプルなトリオ。80分あまりのステージはシェパードの歌唱とピアノがたっぷりと味わえるもので、プログラムが進むにつれてメンバーのソロ終わりで拍手や歓声が沸くなど、会場のムードも好ましくなった。

 シェパードが「最も影響を受けたミュージシャン」というハービー・ハンコックの「カンタロープ・アイランド」と「処女航海」を下敷きにした自作曲は、ベーシストの動きも含めて興味深く聴いた。どこか素人っぽさを残した歌いぶりも、ライヴならではの新発見であり、シェパードの個性として好感度を抱いたのだった。

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2007年07月19日

スウェーデン到着

 成田からフランクフルト経由でストックホルムに向かう。乗り換えの時間を含めると、15時間近い空の旅となった。それにしてもエコノミー・クラスの長旅を2年前の前回以上にきつく感じたのは、肉体的な変化と関係しているのかもしれない。ちなみにスウェーデンと日本の時差はマイナス7間。19日の10時に日本を出発して、現地に到着したのが同日夜というわけだ。今回はレコード会社からのオファーを受けた取材旅行で、担当の西村さん、ライターの服部さんとの3人旅。アーランダ国際空港に到着し、ゲートを出ると「Stockholm Jazz Festival」のカードを掲げた女性スタッフが出迎えてくれた。そして地上へ出た瞬間、北欧ならではの心地よい空気が流れてきた。こればかりは実際に体験しないとわからない感覚だと思う。車で市内のホテルへ移動。フロントに着kuと、先に現地入りしていたスパイスオブライフ佐々氏、ピアニスト西山瞳さんと合流した。西山さんのスタジオ・レコーディングおよびジャズ・フェスティヴァルとジャズ・クラブ出演の取材が主な目的である。チェックインを済ませ、全員でレストランへ。美味しいミートボールで知られる「Backfickan」というお店のテラスに着席。夜の8時過ぎだというのに、まだ外は明るい。この時期の北欧特有の気候であり、人々は戸外での時間を目一杯エンジョイする。それは老いも若きも、すべての大人がこの季節を楽しんでいるように映る。食事が終わったところで、フライトの疲れが残ってはいるものの、やはりせっかく来たのだからということもあり、SJFのメイン会場へ向かった。シェップスホルメン島のメインステージでのジョー・サンプル&ランディ・クロフォードだ。2人は近年共同名義作をリリースして話題を呼んだが、元々はサンプルが在籍したザ・クルセイダーズの大ヒット曲「ストリート・ライフ」にクロフォードが参加したことにさかのぼる。ステージはまずサンプル・トリオでスタート。サンプルのリーダー・アルバムからの「スペルバウンド」やスタンダード曲「ストーミー・ウェザー」を演奏。MCで自身の音楽キャリアを語るスタイルは、昨年「ブルーノート東京」に出演した時のそれを踏襲している。

 そしてクロフォードが登場すると、客席から期待感が沸き起こった。「レイニー・ナイト・イン・ジョージア」「エヴリバディズ・トーキン」「リオ・デ・ジャネイロ・ブルー」と、他のシンガーによるカヴァーでもお馴染みのナンバーを歌い、?あの頃“と変わらぬ歌声を披露してくれたのが嬉しい。スタンダードの「バット・ビューティフル」では、ジャズ・ヴォーカリストとしての底力を発揮した。そしてラストはやはりあの曲でないとステージが終わりにはならない。というわけで「ストリート・ライフ」のイントロに再び客席が沸くと、母国のトップ・トロンボーン奏者であり、新生クルセイダーズに抜擢されたニルス・ラングレンが現れて、サンプル・トリオ+1を結成。70年代のクルセイダーズへの憧れを来日公演で明らかにしたラングレンにとって、このステージでの助演は本望だったに違いない。もう1人管楽器奏者が加われば、ブラスの厚みが出たはずだが、ラングレンは母国を訪れたサンプルを精一杯もてなした。こうしてストックホルム初日の夜は更けていったのだった。

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2007年07月20日

ストックホルムのスタジオ、ステージ、クラブ

 午前10:00にラジオ・スウェーデン(SR)へ移動。西山瞳のレコーディングを取材するためだ。SRは日本のNHKにあたる放送局で、約70席を併設した「スタジオ3」に状態のいいスタインウェイをセッティングし、レコーディング・スタジオとして使用しようというわけである。参加メンバーは前作『キュービウム』同様、ベースのハンス・バッケンロスとドラムスのアンダーシュ・シェルベリ。スウェーデンのミュージシャン、スタジオ、エンジニアが揃って初めて得られるサウンドが、この環境にはあると思った。

 午後は市内を散策。ストックホルムの伊勢丹と呼ばれている(?)NK(エヌコー)へ。1902年創業の老舗百貨店である。お目当ては4FのCD売り場で、ジャズ・コーナーへ行くと一番目立つ場所に『Jazz From The Fourth Floor』(Massive Music)が陳列してあった。これは来店客に生のジャズを味わってもらうために企画された同店でのインストア・ライヴのコンピレーションで、すべて同作でなければ聴けない音源である。

5:00にストックホルム・ジャズ・フェスティヴァルのメイン・ステージへ移動。地元の若手バンドJobalitesを観た。ヨナス・クルハマー(as)、ゴラン・カジュフェス(tp)、キーボード&エレクトロニクス等、3管を含む8人編成だ。
 
 1 曲目はシンプルなリフ・ナンバー。2曲目はレゲエ・リズムによる緩いムードのサウンド。さらに聴き進めるにしたがって、レゲエ/スカ・リズムをサウンドの基調としたバンド・コンセプトが明らかになった。これはクルハマーやカジュフェスがリーダーとして活動しているバンドの音楽性とは異なる。つまり彼らにとってのJobalitesとは、日常から離れた遊び心を大いに盛り込んだバンドであることが明らかになった。そう考えると彼らのサウンドと、会場を包むゆったりとした時の流れが妙にマッチしていると感じた。

 ホテルに戻り、日本人チームが集合。アンダーシュ・シェルベリを交えた6名で、レストランへ。このイタリアン店も屋外スペースのテーブル席があったが、これは店内禁煙に対する救済措置でもあるようだ。街を歩いていると、若い女性喫煙歩行者が少なくないことに気づく。北欧も国によって状況が異なるということか。ディナーの後、ジョシュア・レッドマン3を観るために「ファッシング」を訪れる。1977年に開業した同店は、今年が30周年の節目の年。フェスティヴァル・プログラムの1つなので、プレス・パスで入れるはずだったのだが、すでに満員のため入口でしばらく待機。結局半額の入場料で無事入店できた。演奏が始まったばかりで、着席と立ち見の約200人で一杯の店内は早くも熱気に溢れている。「イースト・オブ・ザ・サン」からトリオは飛ばす。新作『バック・イースト』と連動したヨーロッパ・ツアーらしく、1曲目が終わると、「ロシアから着のみ着のままやってきた」と言って、観客を笑わせた。レコーディング・メンバーであるリューベン・ロジャース(b)にPMGの

 アントニオ・サンチェス(ds)が加わったトリオは、タイトなコンビネーションを披露。ジョシュアはソニー・ロリンズやジョン・コルトレーン(「飾りのついた四輪馬車」)等50年代のレパートリーを取り上げるなど、モダン・ジャズにおけるピアノレス・トリオの歴史を踏まえたコンセプトで自身をアピールした。

 アンコールの「マック・ザ・ナイフ」まで休憩なしの2時間を全力投球で吹き切ったのは、日本のクラブのシステムからするとかえって新鮮。今のジョシュアの勢いを体感させるステージであった。

 ヤン・ラングレン、フレドリック・ノレン、ヨナス・クルハマーら、スウェーデン・ジャズの今を映し出したトラック(2002年録音)が満載だ。定価 139Skrがセールで59Skrというのも嬉しい。ちなみにこちらでは新品が100?200Skr、新譜が180Skr前後。現在の換算レートで 1Skrが20円なので、日本よりも割高である。円が弱っている現況をこんな形でも知った。

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2007年07月21日

ストックホルム3日目

 海外旅行の楽しみの1つにホテルのサービスがある。特に重要なのが朝食だ。新市街に位置するスカンディック・アングレは、ストックホルムJFの出演ミュージシャンが宿泊していることもあって、メニューが豊富。日本での生活とは違って、たちまち早起きが習慣となった。1Fのテーブル・スペースに行けば、知った顔に会えるというわけだ。朝食後にガムラ・スタンを散策する。ストックホルム発祥の地であり、現在もカール・グスタフ16世が執務する王宮や大聖堂、教会などがある観光名所だ。ホテルから徒歩15分で到着し、王宮の中を歩く。歴史を感じさせる建造物が並ぶ。ガムラ・スタンに限らず、ストックホルムに古い建物が多いのは、地震がないことと大いに関係があって、どれもが頑丈な造りだ。日本のような高層ビル群もないので、青空が広く見渡せるのもこの街の魅力になっている。

 午後1:00にメイン・ステージがあるシェップスホルメンへ移動。プレス・ルームで関係者に挨拶し、2:00からスライディング・ハンマーズのステージを観る。ジャズ界では珍しい2人の女性トロンボーン・チームだ。日本でもアルバムがリリースされていて、人気が高い。来日公演も行っているが、やはりこの地のステージを観るのは格別。曲間のMCがスウェーデン語なので、日常感覚の彼女たちを楽しむことができた。J.J.ジョンソン&カイ・ウィンディングをお手本とした上で、ヴォーカルもとれるのがSHのユニークさ。さらにヴィジュアルの魅力が加わって、他に例のないオリジナリティを確立している。その持ち味が最も発揮されたのが、トロンボーンとスウェーデン語ヴォーカルのデュオで始まる「ビウィッチト」だった。

 セット・チェンジに続いて、いよいよ西山瞳トリオが登場。これほどの規模(2000人収容)の野外コンサートは日本でも経験したことがない西山にとって、まさに晴れの舞台である。レコーディング・メンバーでもあるハンス・バッケンロス(b)+アンダーシュ・シェルベリ(ds)とのステージは、デビュー作のタイトル・ナンバーから始まった。メンバーのソロ回しはなく、終始ピアノが主旋律を奏でる構成。西山の音楽を初めて体験する多くのオーディエンスに対して、これは掴みとしての自己アピールになったはずだ。叙情的なメロディー・センスを輝かせる「ユー・アー・ノット・アローン」、ダイナミックに躍動する「フラッド」「ジラフズ・ダンス」と、日本での演奏と変わらぬ力を発揮した。さらに頼りになる2人のスウェディッシュを得たことで、西山のレギュラー・トリオには求められないトリオ・サウンドを体感できたのが収穫だった。

 終演後、市街の南西に位置するホーゲルビーパルケンへ向かう。5:00からマルガリータ・ベンクトソンのステージを観る。80年代に結成したザ・リアル・グループのメンバーとして名声を高めた実力派ヴォーカリストだ。5月にソロ・デビュー作『アイム・オールド・ファッションド』をリリースしたタイミングでの、ライヴ鑑賞である。150人ほどの客席がセッティングされた野外の、屋根つき会場。地元の人々がぶらりと集まったという雰囲気だ。広い公園が隣接しているので、ピクニック感覚で足を運んだ家族連れも多い。ステージは5管+リズム・セクションからなるオクテットがバックを務めるもの。新作のレコーディング・メンバーとほぼ同一という豪華なセッティングである。やはりマルガリータは母国語でMCを行い、生き生きとした普段着姿の魅力を印象づけた。本人はスキャットのみでインスト・パートをフィーチャーしたり、トランペットのカール・オランドソンがヴォーカルを務めて「シャイニー・ストッキングス」を下敷きにしたヴォーカリーズ・デュエットを演じるなど、本格派の実力を発揮。

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2007年07月22日

スウェディッシュ・ビューティー(1)

 日曜日のストックホルムは多くの販売店が休業のため、平日に比べると市内は静かな雰囲気だ。今日は午後一で2人の女性ヴォーカリストにインタビュー。最初は今月日本でデビュー作『ザット・ガール』をリリースしたばかりのロヴィーサである。モニカ・セッテルンドの奨学金を受けて学び、プロの道に進んだストックホルム生まれの25歳だ。スウェーデンを代表するピアニストであるベンクト・リンクヴィストが実父で、アルバムのプロデューサーも務めている。これまでの音楽キャリアやデビュー作に込めた思いなどの話を聞いた。休憩をはさんで日本デビューを控えるアンナ(Anna Sise)にインタビュー。ガンビア出身の父を持つブラック・スウェディッシュだ。ビリー・ホリデイやチャカ・カーンを好んで聴き、プロ入りしたアンナは、スタンダード・ナンバーにオリジナルのスウェーデン語歌詞をつけたことで現地では知られる作詞家の、未発表作品の使用許可を得たというラッキー・レディ。日本でその全貌が明らかになるのはもうすぐだ。

 取材が終わったところで、日本人スタッフと共に約2時間のストックホルム周遊クルーズに出かけた。市内の湾岸から出発し、シェップスホルメンとガムラ・スタンの間を抜けて、ソーデルマルムを右回りに航行。あのチャーリー・パーカー『スウェディッシュ・シュナップス』のアルバム・カヴァーでも知られる市庁舎も海上から見た。それにしてもストックホルムとは水の都市。自然が身近にある環境は心地よい。
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 周遊を楽しんだ後は、市内のイタリアン・レストラン「CAPRI」へ。昼間郊外の墓地を散策してきた瞳ちゃん撮影の写真を皆で見ながら、同地最上の伝統的なイタリア料理に舌鼓を打った。

2007年07月23日

スウェディッシュ・ビューティー(2)

 朝食を済ませて、午前中は市内を散策。中央に噴水があるセルゲル広場周辺を歩いていると、ガイドブックに載っていないCDショップを発見した。店内に入ると平台にディスカウント盤が並んでいて、端から順番にチェック。ジャンル分けされていないので、宝探しのような楽しみもある。モニカ・セッテルンド、ザ・リアル・グループをゲット。ジャズ・コーナーでは4枚組『Svensk Jazzhistoria Vol.9』(Caprice)を発見した。未発表音源を多数含む1960?64年のオムニバスだ。東京のショップで未見なので、これも購入。

 ホテルに戻り、午後一にインタビュー・ルームへ。スパイスオブライフの新シリーズ「スウェディッシュ・ビューティー」の第1弾となったマルガリータ・ベンクトソンに話を聴いた。ザ・リアル・グループを昨年脱退し、ソロ活動をスタートさせたばかり。そんな中での初めてのアルバム『アイム・オールド・ファッションド』は、ペーター・アスプルンド(tp)、ヨアキム・ミルデル(ts)に加えてストリングスも配した豪華な編成だ。20年のプロ・キャリアを誇りながら、謙虚に自分を語ってくれた姿が印象的だった。

 続いて9月に日本デビューを控えるリーサにインタビュー。ハリウッド映画に出演する女優としてすでに活躍しており、今回クリス・ボッティ、デヴィッド・フォスターらの協力を得てデビュー作『エンブレイサブル』を完成させた。北スウェーデンに生まれ、NYとLAで自分を磨いたキャリアは、間近で話を聞いていてもスターのオーラと共に感じられる。日本ではまだ無名だが、ジャズの枠を超えて注目されるのも時間の問題だと思った。

 取材が一段落したところで、夕食のため日本食レストランへ移動。すると隣のボックス席から声をかけられた。さきほど取材をしたリーサが女性友人といっしょに来ていたというわけ。偶然の再会を喜ぶ。寿司、刺身盛り合わせ、天麩羅を注文。店員から求められたので、日本人としての率直な意見を伝えた。腹ごしらえが完了したところで、「グレン・ミラー・カフェ」へ。今回の取材で最後のイヴェントとなる西山瞳のクラブ・ライヴである。同店は近年、 MoserobieやAyler Recordsからのライヴ・アルバムを発信している、ストックホルム随一のジャズ・クラブ。2日前にストックホルム・ジャズ・フェスティヴァルの大舞台を無事に務めた西山が、さらに同地で深い足跡を刻むべきセッティングされたギグだ。メンバーは引き続きのハンス・バッケンロス(b)と、西山とは初共演となるポール・スヴァンベルグ(ds)。ポールはスウェーデンの名ピアニスト=ラーシュ・ヤンソンの実息で、まだ23歳の若さ。

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 20: 00に始まったステージは3セット。23:00過ぎに終わった。40人超満員の観客には、同店の常連客の他、SJFのステージを観て来店したスウェーデン人も。1週間の滞在で現地のファンを開拓した西山にとっては、実り豊かなストックホルム再訪となったことだろう。

2007年07月25日

慌しい帰国日

 24日朝、ホテルをチェック・アウトして、タクシーでストックホルムのアーランダ空港へ。フランクフルトからの帰国便は、行きと違い空席があって、通路側席のぼくは多少楽に過ごせた。とは言っても実質の睡眠時間は3時間程度。8:00に成田へ着き、荷物を片付けながらメールをチェックすると、音楽評論家・青木啓さんの訃報が届いていた。青木さんは5月リリースのスウェディッシュ・ビューティー第1弾であるマルガリータ・ベンクトソン盤のライナー・ノーツを執筆されている。それだけに突然の知らせだった。

 ぼくは中学生の時、近所の図書館のレコード・コンサートで話をして以来、青木さんは気になる評論家で、自分がプロ入りしてからは時折助言をいただく関係だった。千葉県の通夜斎場へ行き、最期のお別れをした。尊敬する先輩がまた1人逝去。遺影を前に、御礼の言葉を伝えた。自分が死んだ時に、ジャズ関係者が集い、悼んでくれるだろうか。ふとそんなことを考えた。

2007年07月27日

南青山のDVDコンサート

 「ブルーノート東京」に至近の場所に、個性的な紳士服販売店「クールストラティン」はある。同店からのリクエストを受け、ぼくが仕事上でも関わっているバンダイとセブンオークスの協力で、DVDイヴェントが開催された。水道橋にセブンオークス・パブがあった昨年までに、このようなイヴェントを3回開いており、今回は場所を変えた久々の上映会とも言える。ハード面は従来と同様、リンジャパンさんと加賀コンポーネントさんにお願いして、この空間では贅沢過ぎるほどのオーディオ環境を実現。クール?とバンダイの顧客約40名を迎えて、イヴェントはスタートした。2セット制の第一部ではヨーロピアン・ジャズ・トリオを皮切りに、ダイアナ・クラール、ミシェル・ペトルチアーニ等5タイトルを上映。30分の休憩をはさんだ第二部ではデヴィッド・サンボーンのレジェンズから始まって、キース・ジャレット・トリオまで4タイトルを上映。来場者にはワインをふるまい、楽しんでいただけたようだ。 理想を言えば、以前のセブンオークス・パブのように、もっと自由な雰囲気だと、お客様もよりリラックスした環境でイヴェントを楽しめたのではないかと思った。今後の反省材料としたい。

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